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町長コラムNo.22 「生きもの」

【中村桂子さんの講演会】

 5月10日、中村桂子さんの講演会に参加し多くの刺激を受けてきました。中村さんは、人間は生きものであるが故に「生きる力を育む学びの原点は農業にあり、日本中の小学校に農業科ができたら、日本は素晴らしい国になる」と語ってこられた方で、一度お話を聞いてみたいと思っていました。今回は、映画「大地の侍」の上映や、町職員研修などでいつも協力をいただいている磯田憲一さんが理事長を務める一般財団法人HAL財団様の縁で、中村さんのお話を聞くことが実現しました。
 さて演題は「人類はどこで間違えたのか」。何とも過激な言葉です。ここで言う間違えた時期とはいつなのかを考えると、古代人と現代人を比較して、食べることと生きることに対しての違いが生じた時期です。古代人は食べることについてすべて自分たちで責任を持っていたのに対して、現代人はお店で材料を買ったり、弁当などすぐ食べられるものを買っているので、食べることと生きることの繋がりが消費の部分だけで、生産とは何の関わりもなく暮らしている人が大半であることが分かる。食べることが生きることだという感覚はあるけれど、ヒトが生きることの基本である自然からの食べ物の入手に関わらない生活をしていることは危険であり、これからは古代の暮らしに戻ることなく、この危うさを無くす生き方を探る努力が必要であるということが、中村さんが伝えたいことであると理解しました。
 仮に農業科ができたら、「ヒトが生きものとして生きるために食べることを学ぶ」、このことを学校で学ぶことができると思います。また、本町に限れば、林業も暮らしを支えるために、明治時代の末期から本町にとって必要な基幹産業です。滝上には農業と林業がある。だからこそ人工知能と機械に支配された現代社会が機能しなくなっても、本町なら人間らしく食べて生きていけることを、子どもたちに伝えることができる取り組みを続けていきたいと、改めて確信することができた中村さんの有意義な講演でした。

【芝ざくらの風土】

 今年の芝ざくらまつりの開花宣言は、5月5日に行われました。昨年は5月1日、一昨年は5月4日でした。20年前くらいの開花宣言は、ゴールデンウィークが終わるころの時期が大半でしたが、ここ数年はゴールデンウィーク期間に開花することが多く、気候変動による温暖化の影響を受けていることを、芝ざくらでも感じとれます。開花時期が毎年どんどん早まれば、4月の下旬ころから見ごろになり、ゴールデンウィークは見ごろのピーク、5月中旬には見ごろが終了することも、今後あり得るのではないでしょうか。
 さてその芝ざくらは、滝上の風土でもあります。私の経験値の話ですが、例えば、ギョウジャニンニクの旬は芝ざくらの開花前でそこを過ぎるとネギ坊主が成長すること。芝ざくらの開花が始まるとコブシの花が咲きだすこと。芝ざくらの開花が終わると遠く北見山地の残雪が消えること。芝ざくらのピークを迎えると虫が増えること。等々。滝上に暮らす私にとっては、芝ざくらは単に圧倒的なピンク色の花の絨毯だけでなく、暮らしていく上で大切な風土であり情報源です。そんな芝ざくらは、私たちと共に滝上に根付く生きものです。共に生きていくために、50年先、100年先を目指し、滝上の風土を大切にしたまちづくりを展開していきたいと思います。

▲昭和32年、みかん箱一杯の芝ざくらは、68年の時を経て町の風土となりました。

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